こんにちは
散歩ライフのポルトです。
今回は、これまでのストックから厳選した散歩の紹介です。
前回「元麻布の台地」の南側の坂道を愉しんできましたので紹介します。
地形の特徴
今回歩いたルートを赤線で示しています。田町駅から広尾駅まで歩いてきました(歩行距離 約8.5Km)。まずは、このエリアの地形の特徴からです。

<地形の特徴>
・古川:地形図・左端中央部を流れてきた渋谷川が天現寺交差点付近から古川と名前を変えます。古川は、途中から首都高2号目黒線の高架下に入るので、地形図では川の流れが分からなくなります。麻布十番駅のところで右にカーブし右端上部に向けて流れていきます。
・古川の低地:古川の流れに沿って、川によって浸食された低地(緑色部分)が広がっています。特に中央下部には湿地帯が広がっていたようです。
・南麻布の台地:地形図・中央のうす茶色部分です。
南麻布の台地の傾斜がどのようになっているのか、地形図のA-Bラインを断面図で見てみます。

中央の窪みに古川が流れています。台地の西側斜面と東側斜面を比べると東斜面は非常に急ですね。古川との標高差が18mもあります。古川によって浸食されたせいでしょうか? 面白いですね。
ちなみに右側の丘(標高12m)には、慶應義塾大学があります。
それでは、実際に行ってみましょう。街歩きスタートです。田町駅から慶應義塾大学の脇にある坂道を目指します。
三井俱楽部の丘

綱坂(つなさか)です。平安時代の武士・渡辺綱(わたなべのつな)がこの付近で生まれたというのが由来のようです。
坂の右側にイタリア大使館(伊予・松山藩邸跡)、左側には綱町三井倶楽部(日向・佐土原藩邸跡)があり、洗練された街並みが続きます。

綱坂のてっぺんまで来ました。綱町三井倶楽部の風格のある建物が目に入ってきました。ジョサイア・コンドルの設計と聞いて納得しました! ネオ・バロック風の特徴があるそうです。会員制のため庶民は中には入れませんが、一度は建物の中も見てみたいですね。
三井倶楽部の前の坂を古川に向かって下ってゆきます。

日向坂(ひゅうがさか)です。徳山藩毛利日向守の屋敷があったことから名付けられたようです。
アイドルグループ「日向坂(ひなたざか)46」と同じ表記ということで、一気に知名度が上がったようです。坂をゆったりと下ってゆきます。
古川の低地

首都高高架下を流れる古川です。古川の二之橋からの眺めです。
この辺りは、川の上が高架によっておおわれていないので、開放感があっていいです。
交差点を渡って仙台坂を途中まで進み、大韓民国大使館の下の道に入ってゆきます。

マンションの間に壁(崖)が見えます。台地の高さは、低地に立つマンション3Fと同じぐらいの高さがあります。かなりの段差です! 冒頭の断面図(台地の東側斜面が急になっている)がこれで実感していただけましたか?
高低差が実感できる風景もいいですね。
ちょっとだけ台地に上ってから、坂を下ります。

絶江坂(ぜっこうざか)です。坂の途中にある曹渓寺(そうけいじ)の名僧・絶江から名付けられたようです。
緩やかな坂が南に向かって続いています。この辺りは、台地の南斜面で日当たりが良く、住むにはもってこいです。古川に向かって坂を下ってゆきます。

古川の「四の橋」付近にある薬園坂(やくえんざか)です。坂上に幕府の御薬園(薬草栽培所・小石川植物園の前身)があったことから名付けられたようです。
坂のカーブの曲がり具体がいいですね。カーブの先にどんな風景が広がっているのか、ワクワクしながら坂を登ってゆきます。
薬園坂の窪地(竹ケ谷)
薬園坂の近くにある窪地を竹ケ谷(たけがやつ)と呼んでいたようです。竹ケ谷を探検しに行きます。

薬園坂の途中で曲がって「奴坂(やっこざか)」に入ってゆきます。奴坂の由来は、竹ヶ谷(たけがやつ)の小坂で「谷小坂(やつこざか)」がなまったものなど諸説あるようです。
道の奥・横断歩道の辺りが一番低くなっています。ここが谷筋です。
谷筋を下ってゆくと、突然、小さな池が見えてきました!

釣り堀(衆楽園)だったところです。現在は営業をしていないようです。住宅街の中で、ひっそりと釣りをするのは楽しそうです。
衆楽園に流れ込んでいた川筋を上流に向かって辿ります。

南麻布三丁目保育室の裏路地まで上って来ました。それとなく川跡の感じがします。
台地の南西部を目指します。南斜面で日当たりが良く、大使館や高級住宅が立ち並んでいます。
南斜面のハイソなエリア

有栖川清水(懐石料理)の入り口です。高い生垣に真っすぐ続くエントランスが素敵です。この辺りは、盛岡藩南部家の下屋敷があったようです。大名屋敷は、台地上のいい所に立地してたんですね。
南西斜面を低地に向かって下ってゆきます。

青木坂です。旗本・青木氏の屋敷があったことから名付けられたようです。
坂の左側には、フランス大使館公邸が広がっていますが、塀が高く中の様子を覗くことはかないません。ほぼ一直性に続く、なだらかな坂をゆっくりと下ってゆきます。
坂を降りた後、新富士見坂を登って台地上を目指します。


新富士見坂のてっぺんです。富士がよく見えるため名付けられたようです(今回は見えませんでした)。
正面の建物、南欧風でしょうか? とても素敵です。周囲にも豪邸や高級マンションが立ち並んでいます。
台地上を豪奢な建物を眺めながら進みます。

南部坂です。坂の隣にある有栖川宮記念公園辺りも、盛岡藩南部家の下屋敷だったようです。そんなところから南部坂と名付けられたようです。坂の高低差やカーブの曲がり具合がとてもイイ感じです!
台地の西斜面を利用して作られた有栖川宮記念公園をゆっくり散策しながら広尾駅に向かいます。今回の街歩きは、ここまでになります。
あなたも南麻布の台地・南斜面のハイソな雰囲気を楽しみながら、坂を愉しんでみてはいかがですか?
今回も以下の本を参考にさせて頂きました。ありがとうございました。
・東京スリバチ地形散歩 都市新発見編(皆川典久・著/洋泉社)
・東京スリバチの達人 分水嶺東京南部編(皆川典久・著 /昭文社)
特に「東京スリバチの達人 分水嶺東京南部編」は、地図上に高低差が色分けされていて、台地・低地が手に取るようにわかります。また、地図上に川跡・暗渠、坂道・階段の記載があるので、街歩きに行く前のルート検討や街歩き後の振り返りにも最適です。さらに、現代地図と、明治時代、江戸時代の古地図がセットで掲載されているので、地域の変遷もわかります。
街歩きをされる方には、是非お勧めしたい1冊です。
価格:1,650円(2021/10/30 12:00時点)、発売:2020年12月
麻布については、コチラ↓の記事もご覧ください。
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